天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 (新潮文庫)
ずっと心の底に押し隠していたものが、暗い、その底の闇から頭をもたげていた。それを見てはいけないと、思い続けてきたのに。
チャグムは、ふるえながら息を吸い込んだ。
自分が選んだ道はまちがっていない――これが北の大陸のためにはもっともよい道なのだと思いたかった。けれど、ほんとうは……心の底では、そうなのだろうか、という迷いがある。自分がこの道を選んだために、もうすでに何人もの人の命を奪ってしまった。これから先は、もっと多くの人が死ぬことになる……。
同盟が成功したら、自分は、カンバルやロタの兵士たちを、新ヨゴへ導いていくことになるのだから。
(異国の兵たちに、新ヨゴ皇国のために戦え……と、敵の矢に、剣に、その身を晒せと、命じるんだ……)
そして、その戦の先に、父と向かいあわねばならない日がくる。
再び共に旅することになったバルサとチャグム。かつてバルサに守られて生き延びた幼い少年は、苦難の中で、まぶしい脱皮を遂げていく。バルサの故郷カンバルの、美しくも厳しい自然。すでに王国の奥深くを蝕んでいた陰謀。そして、草兵として、最前線に駆り出されてしまったタンダが気づく異変の前兆――迫り来る危難のなか、道を切り拓こうとする彼らの運命は。狂瀾怒涛の第二部。
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