天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 (新潮文庫)
ずっと心の底に押し隠していたものが、暗い、その底の闇から頭をもたげていた。それを見てはいけないと、思い続けてきたのに。
 チャグムは、ふるえながら息を吸い込んだ。
 自分が選んだ道はまちがっていない――これが北の大陸のためにはもっともよい道なのだと思いたかった。けれど、ほんとうは……心の底では、そうなのだろうか、という迷いがある。自分がこの道を選んだために、もうすでに何人もの人の命を奪ってしまった。これから先は、もっと多くの人が死ぬことになる……。
 同盟が成功したら、自分は、カンバルやロタの兵士たちを、新ヨゴへ導いていくことになるのだから。
(異国の兵たちに、新ヨゴ皇国のために戦え……と、敵の矢に、剣に、その身を晒せと、命じるんだ……)
 そして、その戦の先に、父と向かいあわねばならない日がくる。