上達の法則―効率のよい努力を科学する (PHP新書)

学習心理学という領域では、練習の集中と分散という問題についても研究が行われている。
毎日練習するというように高度に集中的な練習をしていた場合、なにかの事情で練習ができなくなると比較的短期間で急激に忘却が起こる。逆に分散訓練といって、相対的に低い頻度で練習をしていた場合、向上も遅いかわり、練習ができなくなった場合の衰え方も穏やかなのである。
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学習の後、忘却が生じるが、忘却は徐々に生じるわけではないことがわかっている。忘却は、学習から二十四時間後、七十二時間後、そして六〜七日後に大きく生じるのである。
無意味綴りの学習では、二十四時間後では七割くらい覚えている。ほぼ七十二時間後に、それが二〜三割程度にストンと落ちる。その二〜三割というのがしばらく続き、その後、一週間後にまたストンと落ちる。
そういう形で忘却が起こっていくので、復習は、それぞれの忘却直前の二十四時間後、七十二時間後、一週間後に行うのが効率的なのである。
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いちばん要注意なのは、これまでに築いた地位に心理的に安住し、上達の対象をなにも持たない状態でいることだ。自分ができるようになったことだけをやり、自身の新しい能力を耕そうとしない生活を続けると、次第に、緊張を失い、自分自身を大切にすることをも忘れてしまうことになる。そうなると、いつの間にか、専門の仕事に関する判断も、新しいことを避ける保守的な傾向に染まっていく可能性がある。
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