ガー・レイノルズ シンプルプレゼン

P.28

 準備は 3 つのプロセスの中で最も重要なパートです。時間がないと適当に済ませてしまいがちですが、重要なので時間をじっくりかけるべきです。

 いつも忙しくしている人へのアドバイスは、まずは慌ただしい気持ちを落ち着かせること。道教の教えに「流れる水に自分の姿を映すことはできない。姿を映すことができるのは静かな水面だけである」という言葉がありますが、プレゼンにも同じことが言えます。慌ただしい気持ちでは、物事を見極められず、アイデアも出てこないのです。
 一流の科学者やクリエーターも似たようなことを言っています。アイデアを考えるのに、一人になれる "孤独の砦" のような場を持つべきだと。ジャズやクラシック音楽を聴く人もいるでしょう。一人になり、心を落ち着かせて考える。そういう時にこそ素晴らしいひらめきが生まれるのです。

 映画「モンティ・パイソン」の俳優や脚本などを手がけたクリエーティブなジョン・クリーズ氏ですら、アイデアはどこから生まれるか分からないと言っています。ただ、少なくとも「パソコンからはアイデアは生まれない」と言っています。この彼の言葉には、注意深く耳を傾けるべきです。
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P.25

 日本の食習慣を表し、私の好きな言葉に "腹八分" があります。腹八分は、日本人が考えだした素晴らしい概念だと思います。米国人にはこの考え方がないので食べ過ぎて太ってしまい、薬をのまないといけなくなります(笑)。
 腹八分のポイントは、食べ物を残すということはなく、適量を食べるということです。適量を食べるためには、己を抑制して、必要なものだけを絞り込む必要があります。この絞り込むという考え方はシンプルプレゼンの根幹を成します。さらにプレゼンは制限時間より少し早く終えるなど、腹八分の考え方は様々な場面で適用できるのです。
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P.23

プレゼンの途中に原稿を忘れて「何だっけ?」と、上を向いてしまう人がいますが、あれはいけません。プレゼンの内容は暗記するのではなく、自分の中に取り入れて、心で感じることが大切なのです。
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P.20

「パワーポイントによる死」

箇条書きを多用した複雑なスライドを用いたプレゼンのことを「パワーポイントよる死」と言います。あなたはパワーポイントによる死を経験したことはありますか?あるいは招いたことはありますか?多くの人はあるでしょう。世界的に有名な脳科学者のジョン・メディナ博士は、著書『ブレイン・ルール』(NHK 出版)の中で、パワーポイントによるプレゼンはやめようと主張しています。なぜかと言えば、多くの場合は左ページの写真のような悲惨な状態を招くからです。

「いや、そんなことはない。自分が聴衆の時は真面目に聞いているし、自分が話した時も聴衆は素晴らしいと言ってくれた」と言う人もいるかもしれません。本当にそうでしょうか?
 左ページ下にある 2 枚の写真は、どことは言いませんが、典型的なプレゼンの風景を撮ったスナップです。スクリーンははるか前方にあり、後ろの席からはスライドの文字が読めません(写真 A)。それにもかかわらず、長時間に及ぶプレゼンが終わると、徴収は「素晴らしい内容だった」と言っていました。しかし、そんなはずがあるわけがありません。その証拠に、私の隣にいた人たちを撮った写真(B)を見てください。眠っていますよ(笑)。
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