生きる技法
幸福とは感じるものは、感じるものです。幸福だと感じれば幸福であり、感じなければ幸福ではないのです。〈略〉「夢」というものは、幸福へと至るための「手掛かり」として、意味があるのであって、その実現そのものには意味がないのです。夢はしっかりと見るに限るのです。そうすれば自ずとあなたは、幸福に向かって連れて行かれます。(p145)
この世界は、人間が、自分自身を愛し、その愛の力で盲点を次々と乗り越え、溌剌として生きる、そういう世界です。そこには友達しか居ません。〈中略〉友達しかいないので、恐怖も不安もありません。あなたはゆっくりとしっかり時を刻み、時が来れば、この世から去っていくばかりです。p162
人間は自信を持ち、自らの精神を自由に広げるときにのみ、なにか本当に意味のあるものを生み出すのです。現代社会の問題は、価値の基準が狂ってしまっていて、そういう価値を価値として認められないことにあります。その代わり、「才能ある子」が焦燥感に駆られて吐き出したものを賞讃するようになっているのです。
こういう「才能ある子」の問題点は、その見る「夢」が、文字化しうることにあります。「京大に合格する」とか、「本を出版する」とか、「賞を受賞する」とか、「東大の教授になる」とかいう「夢」は、ことごとく文字化できます。
このような──両親の誉れとも言うべき──人たちには、強靭で安定した自信があるはずなのですが、実際には話はまるで逆なのです。その人たちの手がけることは、すべてうまく行き、素晴らしい結果に終わって、その人たちは賞賛されたりねたまれたりします。成功することが大事な場合に失敗することはありません。けれども、何をしても駄目なのです。すべての成功の裏に憂うつ、空虚感、自己疎外、生の無意味さが潜んでいます──自分は偉大な存在だという麻薬が切れたり、「頂点」でなくなったり、間違いなくスーバースターとは言えなくなったりすると、あるいは突然、何らかの、自分の理想像に合わなくなってしまったと感じたりしますと、隠れていたものが即刻頭をもたげます。p.138
私の友人の香港大学の先生がいます。彼は香港の貧民窟に生まれ、父親に厳しく育てられて、何かを実現しないと決して褒められはしない、ということを体で覚えてしまいました。その馬鹿力を利用して、香港大学に合格し、オックスフォード大学で博士号をとり、香港大学の先生になったのです。
その彼も、私と同じことを言っていました。大学に合格しても、博士号をとっても、本を出版しても、就職しても、その一瞬だけホッとするけれど、すぐに不安になって、次は何をしないといけないのだろう、と考えてしまう、と言うのです。p.136
自分自身を受け入れられるというのは、自分の感覚を肯定される、ということです。人間の感覚というものには、非常に深い計算が込められています。そこから人間は意味をつかみとるのです。それゆえ、人間が世界の意味をしっかり受け止められるようになるには、自分の感覚を受け入れるという経験を積む必要があります。そうして、世界と自分との関係を養わねばならないのです。
しかし、「才能ある子」はそういうことができません。「才能ある子」を育てるには、その子の感覚を否定して、大人にとって、社会にとって好都合な感覚を押し付ける必要があります。これをする方法は、「アメとムチ」です。怯えさせ、利益で釣るのです。そうやって子供を徹底的に仕込めば、「芸」をするようになります。そうやって芸を飲み込む回路を鍛えるのが、「才能ある子」を創り出す親です。p.142
自立した人というのは、自分で何でもする人のことではなく、自分が困ったらいつでも誰かに助けてもらえる人であり、そういったマネジメントに長けている人のことだ、ということに気づきました。そういった関係性の構築は、貨幣を用いても、用いなくても可能です。p.33
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