シングル化する日本 (新書y)
 社会は「家族の価値」の大切さをあおり、「道徳の必要性」を強調しつづけるであろう。それが市場社会における補完的な役割を果たすことが期待されているからである。
 だが、実際は家族や道徳の価値が叫ばれるだけで、社会システムとしては何も積極的に援助しないので、家族はただ厳しくなっていく生活を守るために無償で助け合う中間組織として利用されることにになる。そのしわ寄せにも限界が生じて、一部の恵まれた状況の家族を除いて、そのほかの多くの家族の状況が悪化していく(経済的破綻、住環境や生活の質の悪化、離婚の増加、子供に与える教育の質の低下)と予想される。
 働く女性は増えるが、エリート層以外は低賃金職が多く、家庭負担も抱えてくたくたになるであろう。男性も低賃金職に就く者が増え、もう一家の大黒柱になることはできず、家庭内で一定の家事・育児分担をこなす者が増えていくであろう。
 結果として、結婚への積極的誘因要素は増えず、子育て支援も貧弱なので、非婚・少子化傾向は進みつづけるであろうと予想できる。(p117、2003年出版)
--出典: シングル化する日本 (新書y)
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