モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
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 つまり、非ルーチンで創造的な仕事への報酬を、「思いがけない」予期せぬ報酬に制限すれば危険水域に入り込むおそれは少ないということだ。さらに、次の「二つのガイドライン」に従えば、もっと効果的に実践できるだろう。
 一つは、具体的でない報酬を検討することだ。賞賛やポジティブなフィードバックは、金銭や商品よりもずっと害が少ない。デシの当初の実験や、それ以降の調査に関する分析から、「ポジティブなフィードバックは、内発的動機づけを高める効果がある」と判明している。したがって、デザインチームが人目をひくポスターを制作したら、オフィスへ足を運び、こう伝えればいいだろう。「すごいじゃないか!今回のポスターの出来は実に素晴らしいよ。イベントの集客に大きな役割を果たすにちがいない。ご苦労さま。ありがとう」。取るに足らない、単純な言葉に聞こえるかもしれないが、大きな効果があるはずだ。
 二つ目は、有効な情報を与えることだ。外発的な動機づけは、創造性を損ないかねないものの、「情報(※ 注:ルビはフィードバック)や可能性を与える動機づけは、(創造性に)好影響をもたらす」と、アマビルは気づいた。戦場では、誰もが自分の仕事ぶりに対する評価を知りたいと思っているものだ。だがその情報が、無言のうちに相手の行為を操作しようと意図したものではない場合に限る。だから、デザインチームにこう言ってはいけない。「ポスターの出来は素晴らしかった。まさにわたしが依頼したとおりに仕上げてくれた」。代わりに、彼らの仕事に関する有意義な情報を与える。具体的なこと(たとえば「色使いがよかった」)にフィードバックの焦点を合わせるほど、また、特定の結果を達成したことよりも、努力(「あれはたいへんだったんじゃない?」)や構想(「あの構図にはしびれたね!」)に関する賞賛が多いほど、効果的になる。
 要するに、クリエイティブで右脳的な、ヒューリスティックな仕事に対して「条件つき」の報酬を与えると、あなたの立場がおぼつかなくなる。結果に対する「思いがけない」報酬を用いるほうがよい。賞賛やフィードバック、有益な情報を与えるのなら、なおさらよい(このアプローチを視覚的に描いた、次ページのフローチャートを参照してほしい)。