ドストエフスキーにとって大切なのは、主人公が世界において何者であるかということではなく、何よりもまず、主人公にとって世界がなんであるか、そして自分自身にとって彼が何者なのかということなのである。…そこで解明し性格づけるべきものは、主人公という一定の存在、彼の確固たる形象ではなく、彼の意識および自意識の総決算、つまりは自分自身と自分の世界に関する主人公の最終的な言葉なのである。したがって、主人公像を形成する要素となっているのは、現実(主人公自身および彼の生活環境の現実)の諸特徴ではなく、それらの特徴が彼自身に対して、彼の自意識に対して持つ意味なのである。(p.100)
--出典:
ドストエフスキーの詩学 (ちくま学芸文庫)