超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)
●中心的な問い
 ・資本主義とはそもそもどのようなものか
 ・私たちは現在どのような歴史的状況にいるのか
 ・資本主義経済はこれからどこへ行くのか、そしてその中で日本経済はどういう方向に向かっていくべきか
⇒既存の経済学や金融理論だけでは解決できない問題にいまの時代は直面

第1章 先進国の超えられない壁
・先進国の交易条件が悪化したことより、利益を増やす為に人件費を削った
・日本は戦後60年間がんばって1500兆円の金融資産。しかし、欧米主導の金融空間では、13年間で100兆ドルが作られた。
・実物経済であまりに低成長だったので、金融空間でよりレバレッジをかけざるをえない、そういう状況だった
・石油の先物市場をつくるということは、石油を金融商品化するということです。石油を金融商品化して、国際石油市場を整備してしまう。それによって石油を戦略物資から市況商品に変えてしまう。
・「石油の国際取引は原則としてドルで決済しなくてはならない」と言うルール:石油に裏づけられたドルの基軸通貨体制

第2章 資本主義の歴史とヘゲモニのゆくえ
・定員15%の近代資本主義(現在、先進国が10億人でBRICsなどの新興国の人口は少なくとも40億人ぐらいです。あわせて50億人になります。)

第3章 資本主義の根源へ
・資本主義社会には、税というかたちで権的に富を蓄積する運動と、市場における利潤というかたちで経済的に富を蓄積する運動の、ふたつの 運動ができる。そして資本主義がふたつの役割のむすびつきでなりたっているように、これらふたつの運動も相互に結びつくことで資本主義を成り立たせている。
・経済システムの変更をうながした利子率革命(利子率革命によってまさに中世の封建制・荘園制が崩壊し、資本主義経済への転換が起きた)
・利潤率というのは長期的にみれば利子率とほぼイコールになりますから、利潤率の低下は利子率の低下として表れる。
・貨幣経済の発展が、広い範囲で政治的統合を可能にしたと。これは、現代でいうと、国際資本の完全移動性が実現されることで グローバル化がすすみ、国民国家の枠組かがそこから取り残されてきたことと対応する。

第4章 バブルのしくみと日本の先行性 【日米関係の政治経済学】
・レーガノミックスではドル高政策と金融引き締めをやりました。それで外国資本は高金利に魅せられて アメリカに流入したのですが、これに対してアメリカ自身の実物経済が長期的な高金利には耐えられなかった。
・95年の「強いドル」政策のときは、さらに大きく違うのは、レーガン時代には債券でお金を集めたのに対し、 ルービンのほうは、債券でも集めるんですけど、主力は株式で集めたところです。
・アメリカが十数年間比較的にうまくいったのは、年間8000億ドル の経常赤字に対して、1兆2000億ドルぐらいの資金流入がある。だから差引いた4000億ドルを海外投資に回して、 そこで高いリターンを上げる。米資本は集めたお金で新興国など成長期待が高い国の株式に投資するようになった。

第5章 日本はいかにして生き抜くべきか 【極限時代の処方箋】
・経済成長モデルの限界と財政赤字(ギリシャ財政危機の教訓/スペイン帝国も古いシステムに固執して崩壊した)
・インフレ時代の終焉(「先進国総デフレ時代」の到来)
・日本の銀行が国債を買えなくなる日(人民元自由化が財政再建のタイムリミット)
・低成長時代の制度設計(規制が新しいマーケットを創出する)
・知を活かす知的戦略の重要性(低成長時代における国家の役割/規制による豊かさの実現)