ドストエフスキーの詩学 (ちくま学芸文庫)
人間とはけっして自分自身と一致しない存在である。…人格としての個人が本当に生きる場所は、あたかも人間が自分自身といっちしないこの一点なのである。つまり何の相談も受けず、《本人不在のまま》盗み見られ、決めつけられ、予言されてしまうような事物的存在の枠を、彼ら抜け出そうとするその点なのである。人格の真の生を捉えようとするなら、ただそれに対して対話的に浸透するしか道はない。そのとき、真の生はこちらに応え、自らすすんで自由に自己を開いてみせるのである。(p.122〜123)