第三タイプの言葉の様々な現象には、それが文体模写であれ、[語り手による]叙述であれ、一人称の叙述であれ、いずれそのすべてに共通する特徴があって、どの現象もその特徴のおかげで第三タイプの独特なバリエーション(第一バリエーション)を形成しているのである。この特徴とは、作者の意図が他者の言葉を、他者の文体自体の課題にそって模写するのであり…作者の意図を自分の中で屈折させながらも、けっして自分の道から逸脱することはなく、自分自身に真に固有の調子とイントネーションとを手放さないのである。…作者の思想は、他者の思想と衝突することもなく、その思想の方向にそってその思想に追随しながら、ただその方向性を条件づきのものとするに過ぎないのである。(p.389)
--出典:
ドストエフスキーの詩学 (ちくま学芸文庫)