現代思想2012年4月号 特集=教育のリアル 競争・格差・就活
本当に上のほうの強い個人の層だけに選択肢が広がっただけだとしても、それを適切にというか、既存の構造を壊す方向で行使する人がもっと増えてくれば、全体の構造が少しは揺らぐのではないかとも思っています。そういうことを考えなければ、本当に展望がなくなってしまいます。そういった選択肢の行使が、上の層から真ん中の層へと延びて、下の層も少しは恩恵にあずかれるような社会的な仕組みがつくられるしかないのではないか。
〈中略〉
そして大学の役割はここにあるという気がします。大学まで来ても非正規でしか働けないかもしれませんが、社会や会社を批判的に見る能力を獲得することはできる。そのことは以後のキャリア形成に活かせるかもしれない。〈中略〉こうして世の中を対象化して見られる人、改革的に行動できる人材をどれだけ育成していくことができるかといったところにしか、大学の役割はもはやないだろうと思うのです。(p73-74,児美川)