現代思想2012年4月号 特集=教育のリアル 競争・格差・就活

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給付型奨学金がほぼ存在せず、貸与型の奨学金制度のみでやってきたこと自体が、大学卒業後には正規雇用の職業に就けるということを前提にしています。大学卒業後、どんな仕事に就くか、どれくらいの収入が得られるのかわからないうちに借りるのですから、住宅ローンよりもはるかに危険度の高いものです。(p81,大内)
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本当に上のほうの強い個人の層だけに選択肢が広がっただけだとしても、それを適切にというか、既存の構造を壊す方向で行使する人がもっと増えてくれば、全体の構造が少しは揺らぐのではないかとも思っています。そういうことを考えなければ、本当に展望がなくなってしまいます。そういった選択肢の行使が、上の層から真ん中の層へと延びて、下の層も少しは恩恵にあずかれるような社会的な仕組みがつくられるしかないのではないか。
〈中略〉
そして大学の役割はここにあるという気がします。大学まで来ても非正規でしか働けないかもしれませんが、社会や会社を批判的に見る能力を獲得することはできる。そのことは以後のキャリア形成に活かせるかもしれない。〈中略〉こうして世の中を対象化して見られる人、改革的に行動できる人材をどれだけ育成していくことができるかといったところにしか、大学の役割はもはやないだろうと思うのです。(p73-74,児美川)
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近年の新自由主義の下で喧伝されている多様化とは、学校の個性化も含めて、格差の拡大をもたらし、その深刻さを隠蔽する機能を果たしています。〈中略〉多層化している上のほうの層に行けば、確かにかつてよりも選択の自由が広がっている。しかし下に行けば行くほど選択肢が狭まり、ほとんど一つしかない選択肢は劣悪で不安定、過酷ということです。上に上がって行けば少しずつ選択肢が広がり、最上部ではかなりの選択肢が広がっているということが、社会全体に対して選択肢が広がったのだ見せている仕掛けだと思います。どこの層にも選択肢がないのではなくて、選択肢がある人たちも確かにいる。しかし下に行けば行くほど選択肢がないというところを問題化しなければいけないのですが、(p73,児美川)
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