現代思想 2013年5月号 特集=自殺論
戦後の福祉資本主義は、なかでも日本の「企業社会」は、国民を「社会」に統合する形で発展を遂げたのである。会社とは、大企業のサラリーマンにとって、新卒で入社できれば自分から辞めない限り定年まで働き続けられると“信じられる”場であり、中小企業の労働者であっても、右肩上がりの経済成長の中でそして企業グループの一員として「ゆたかさ」を享受できると“思える”場であった。そして、「主婦」は夫のサラリーマン生活を家庭で支え、安定した世帯収入を期待することができ、子どもは将来の安定したサラリーマン生活を目ざして、「良い学校」・「良い会社」に入るための勉強に勤しんだのである。
こうして「企業社会」を構成する諸制度が補完し合いながら国民を強く統合し、その制度の一つである会社組織は授業員に「居場所」を提供したのである。(p112,伊藤)
--出典: 現代思想 2013年5月号 特集=自殺論
お気に入りにいれた人:0人   お気に入りに追加する