現代思想 2013年5月号 特集=自殺論
評価・詳細レビュー
引用
現在の就職活動が学生に与える多大な負担とプレッシャーを与えていることについては、様々な媒体で論じられてきた。〈中略〉しかし、就職活動が学業に与える悪影響がフレームアップされた結果、負担軽減、ひいては就職活動のあり方の議論が、「学生の勉強時間を担保する」(下村博文文部科学相)ために、いつ企業による就職活動を「解禁」するか、という点に矮小化されてしまっている観がある。(p142,橋口)
かくして、一方で、組織の外に放り出され、職場という「居場所」を失う者がいる。「企業社会」では、家庭、学校、会社が相互に補完しながら経済成長を支え、それらの制度の外に自主的なコミュニティが育ちにくかった。そのために、会社組織から外に出ても(出されても)労働市場を器用に泳げない者は、家庭や学校に引きこもるしかなく、それすらできない者は、「バーチャルな世界」以外に、支え合ったり存在を認め合ったりする場を失うことになる。他方で、組織に正社員として残れたとしても、僅かばかりの「あそび」は一掃され、物理的・精神的な「余裕」は失われている。強引な「組織改革」は職場に混乱をもたらし、過重な負担が労働者に押し付けられている。(p118,伊藤)
戦後の福祉資本主義は、なかでも日本の「企業社会」は、国民を「社会」に統合する形で発展を遂げたのである。会社とは、大企業のサラリーマンにとって、新卒で入社できれば自分から辞めない限り定年まで働き続けられると“信じられる”場であり、中小企業の労働者であっても、右肩上がりの経済成長の中でそして企業グループの一員として「ゆたかさ」を享受できると“思える”場であった。そして、「主婦」は夫のサラリーマン生活を家庭で支え、安定した世帯収入を期待することができ、子どもは将来の安定したサラリーマン生活を目ざして、「良い学校」・「良い会社」に入るための勉強に勤しんだのである。
こうして「企業社会」を構成する諸制度が補完し合いながら国民を強く統合し、その制度の一つである会社組織は授業員に「居場所」を提供したのである。(p112,伊藤)
こうして「企業社会」を構成する諸制度が補完し合いながら国民を強く統合し、その制度の一つである会社組織は授業員に「居場所」を提供したのである。(p112,伊藤)
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