かくして、一方で、組織の外に放り出され、職場という「居場所」を失う者がいる。「企業社会」では、家庭、学校、会社が相互に補完しながら経済成長を支え、それらの制度の外に自主的なコミュニティが育ちにくかった。そのために、会社組織から外に出ても(出されても)労働市場を器用に泳げない者は、家庭や学校に引きこもるしかなく、それすらできない者は、「バーチャルな世界」以外に、支え合ったり存在を認め合ったりする場を失うことになる。他方で、組織に正社員として残れたとしても、僅かばかりの「あそび」は一掃され、物理的・精神的な「余裕」は失われている。強引な「組織改革」は職場に混乱をもたらし、過重な負担が労働者に押し付けられている。(p118,伊藤)
--出典:
現代思想 2013年5月号 特集=自殺論