世間体を気にしない、まったくの自由人は、それが自分のライフスタイルだと思い込むことで、自分の体裁を気にしている。格好をつけるのが嫌いだ、という人間は、格好をつけないことが、格好の良いことだと思っていて、つまり、格好をつけている。 問題は同じだ。 他人に干渉するな、と要求することは、そういって、他人に干渉している。 自分が特別だと思っている、それ自体が特別ではない。
意識とは不自由なものだ。こうして、自分のアイデンティティは、素直な思考によって不可逆的に軟弱になっていく
--出典:
詩的私的ジャック (講談社文庫)