プロデューサーズ―成功したプロジェクトのキーマンたち
当時は週に2日か3日は糸井さんの事務所に通っていましたね。毎回新製品のコンセプトを導くための議論を徹底的にやりました。駆け出しのプランナーにとって糸井さんと議論をするというのは本当に大変なことで、最初はただただ話を聞くだけでしたが、そのうちに時々は、糸井さんがおもしろがってくれるような視点をぶつけることができるようになりました。
このプロジェクトは5年ぐらい続きましたが、ここで相当鍛えられましたね。糸井さんと話すために自分のコンセプトを磨く作業を毎日極限までしていましたから。なんとか鋭いことを言って糸井さんを「あっ」と言わせようと、いつも思っていましたしね。たいていは見透かされて討ち死にするんですけど(笑)。でも振り返ってみると、今自分の武器となっている時代のとらえ方やコンセプトの立ち上げ方は間違いなくこの時の糸井さんとの仕事の中で養われたものだと思います。 〜相原博之 P121