TAGROにとって過去は人間の性向を形作ることがあっても、遡ってその芽を摘むような対象ではないのである。
むしろ物語の関心は過去から導き出された現在をいかに生きるか、過去との間にどのような関係を保って歩むのかということだけを主題に選ぼうとするのだ。
そういう意味でこの本に、ダメだった自分の過去を露悪的に語って見せるような自己憐憫はほとんどない。「R.P.E」においてはわかりやすく、「自分はダメだ」ということをアピールするという意味ですら自分はダメで、そこから脱却しなくてはならないということが既に理解のうちにある。
--出典:
マフィアとルアー (星海社文庫)