アレクサンドラ
私がまだ子どもだったころ、ときどき死は私を遊び相手にしたわ。あとになって私たちは一緒に仕事をした。いつも、いっしょだった。ある日私は気がついたの。死が私を甘やかしはじめているって。風変わりな小物を、死は私にプレゼントしてくれたものよ。たとえば、ぜいたくな別れとか、かわいらしい額のしわとか、美しく磨き上げた氷片のように透明な孤独とか。しだいにプレゼントが価値の高いものになってきたので、私、彼は本気なんだなって、わかったのよ。
(物思いにふけりながら、セバスティアンをながめる)
そうしてとうとう彼、私の恋人になったわ。
・・・(略)・・・
アレクサンドラ
愛ってものはね、坊や、弱虫にはよりいっそう向いてないの。——しばらくあなたをひとりにしておくわ。忘れないで、ちょっとでも動いたら死んでしまうから。じゃ、馬鹿なまねはしないこと!
・・・(略)・・・
アレクサンドラ
あんたって子は、まったく絶望させてくれるんだから!私の恋人はね、楽な思いをするのが嫌いなの。彼はね、爪を立て歯をむきだして自分に逆らってもらうのが、お望みなのよ。これは礼儀作法の問題なの。じゃお友だち、またあとで。
(退場)
P173-176
--出典:
遺産相続ゲーム―五幕の悲喜劇