遺産相続ゲーム―五幕の悲喜劇

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¥2,625

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アレクサンドラ
私がまだ子どもだったころ、ときどき死は私を遊び相手にしたわ。あとになって私たちは一緒に仕事をした。いつも、いっしょだった。ある日私は気がついたの。死が私を甘やかしはじめているって。風変わりな小物を、死は私にプレゼントしてくれたものよ。たとえば、ぜいたくな別れとか、かわいらしい額のしわとか、美しく磨き上げた氷片のように透明な孤独とか。しだいにプレゼントが価値の高いものになってきたので、私、彼は本気なんだなって、わかったのよ。
(物思いにふけりながら、セバスティアンをながめる)
そうしてとうとう彼、私の恋人になったわ。

・・・(略)・・・

アレクサンドラ
愛ってものはね、坊や、弱虫にはよりいっそう向いてないの。——しばらくあなたをひとりにしておくわ。忘れないで、ちょっとでも動いたら死んでしまうから。じゃ、馬鹿なまねはしないこと!

・・・(略)・・・

アレクサンドラ
あんたって子は、まったく絶望させてくれるんだから!私の恋人はね、楽な思いをするのが嫌いなの。彼はね、爪を立て歯をむきだして自分に逆らってもらうのが、お望みなのよ。これは礼儀作法の問題なの。じゃお友だち、またあとで。
(退場)

P173-176
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アントーン
手前が―旗幟鮮明に?自分の色を明らかにする?虹の所有者であるこの私が?青。黄。オレンジ。赤。紫。プリズムであるこの私が、自分の色を明らかにしなきゃならん?私はすべての色を通し、すべての色を明らかにする。私は色など知らないのだ。すべての色は色ではない。光だ。闇だ。
(彼はろうそくを消す。すると家全体が夢のように活気をおびる。喘ぎがひどくなり、ミシミシ、メリメリと、ものがずれる音。壁や床が動きだしたかのようである。ほこりがハラハラと天井からこぼれる。蹄の音が近づき、立ちどまるのが聞こえる。いくつもあるギャラリーのひとつで、一瞬、そのすき間から白馬の首が見える。パニックに陥っていて、眼を見開き、歯をむき出している。と同時に宮殿がゆれる。アントーンは暗がりの中に立ったまま動かず、言う)
私は色盲だ。



(P121)
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誓って申しあげますが、マダム、手前どもにとって方角は一つしかございませんが、主人は同時に四方すべてにむかって歩けたのでございます...... (P71)
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