リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理
ラドンはある種の岩や土の中で自然に生み出される。ラドンがもたらす死は人気のない場所でひっそりと起き、誰にも責任がかからない。だから「腹」はやり過ごす。ポール・スロヅィックの調査では、核廃棄物の廃棄場のような放射能源について考えると恐ろしさのあまり膝が震える人が、ラドン ― 間違いなく、核廃棄物によってこれまで亡くなった人より多くの人がラドンによって亡くなっている ― を、非常にリスクが小さいと評価した。自然は人を殺すが、自然に罪はない。火山にこぶしを振り回して怒る人はいない。熱波を責め立てる人はいない。そして、激しい怒りが存在しないため、自然によるリスクは人工のリスクに比べて脅成がずっと小さく感じられるのである。