私を雇ってくれた家畜商はドイル・ハーモンであり、ミシガンのアメリカン・フットボール選手として有名なトミー・ハーモンの叔父にあたる人だ。最初の日の仕事が終わった後、ハーモンがやってきて、わたしが買った雌牛をみてまわった。かなりの数の牛は高く買いすぎていた。そこで、ハーモンが注意してくれた。「たくさんの家畜商に囲まれていて、おまえはうんと若いので、みな、お世辞をいったり、親切にしたり、気が散るようなことを言ったりする」。そういって図を取り出して説明した。「牛のどこを見るべきかがこの図にみな書いてある。誰が何を話そうとも、この基本的なチェック項目から外れてはいけない」。そして最後に、ハーモンはこういった。「人ではなく、牛をよく見るんだ」
この単純明快な助言を、私はビジネスの世界で大切にしてきたし、投資銀行の世界にいるいまも大切にしている。いつも、どのような説明を受けても、商品そのものをみるように努めてきた。簡単ではないかと思えるかも知れないが、実際に簡単ではない。自分がどれほど優秀だと思っていても、一瞬でも牛から目を離し、人に注意を向けていると、全く馬鹿げた企画に引き込まれかねない。 P118
--出典:
ビジネスで失敗する人の10の法則