フロイト―その思想と生涯 (講談社現代新書 383)
科学としての心理学は数学、物理、化学と同じはずであるが、具体的な人間心理を扱う分野に入り込めば入り込むほど、その学説は提唱者の性格と生活とに密接な関係をもってくる。とくに、精神分析の理論はフロイト自信を離れては考えられない。
 たとえば、フロイトは男の子が父を憎んで母を愛する傾向をもつこと、この傾向が心のなかにエディプス・コンプレックスとして存続していることを主張したが、このような考えの由来はフロイトの伝記を読んで始めて了解しうるであろう。-宮城音弥「まえがき」p.3-4-