この1冊ですべてわかる コーチングの基本
P.129

 自己を客観視させる方法として最も直接的で効果が高いのは、自分自身を撮影・録音した情報をそのまま見聞きしてもらうことです。
 コーチング・セッション中の会話、会議の様子、オフィスの自席での自分と部下の会話、面談の様子等々、了解が得られればコーチが録音や撮影に行くこともありますし、クライアント自身に定点カメラ等で撮影してもらうこともあります。
 そして記録した映像や音声を、コーチング・セッション中にコーチとクライアントで一緒に視聴します。百聞は一見にしかずとはよくいったもので、この手法は非常にインパクトが強く、たいていのクライアントは大いにショックを受けます。過去には「こいつが上司だったら俺、モチベーション上がんないわ」「何だか終始上から目線で聞いていて苛立ちを覚える」と自分自身を評した方もいました。
 このように、課題や汚点、不都合なことなど思いどおりに行かない現実に真正面から向き合うことを「コンフロント(直面)する」と表現します。コンフロントした状態は、無意識にもっていた自分のセルフイメージ(こうありたいという理想の自分自身)とリアルセルフ(実際の自分自身)の間にギャップを強く認識している状態のため、非常に居心地の悪い嫌な気分にさいなまれます。人が周囲からのフィードバックを恐れたり、そう簡単には聞き入れようとしなかったりするのは、コンフロントを起こして嫌な気分になるのを避けたいからでしょう。
 コンフロントを起こしている瞬間は、無意識のうちに抱いていたセルフイメージを言語化する大きなチャンスです。