思想としてのパソコン
ヒトがその心理的な過程を人工的に完全複製することは望めないとしても、これから学ぶことは可能であるはずだ。人工の記録は比較的永続性があるので、多少は改良さえもできるだろう。だが、ヒトの頭脳のアナロジーから得られる最初のアイデアは、情報の選択に関するものだ。索引ではなく、連想による選択を機械化できるかもしれない。こうした機械によって、ヒトの連想作用におけるほどのスピードと柔軟性を望むことはできないにせよ、記憶装置から再現される事項の永続性と明瞭性という点で、ヒトの頭脳を決定的に打ち負かすことも可能なはずである。

個人用の未来の装置を考えてみよう。これは一種の機械化された私的なファイルと蔵書のシステムである。名前が必要なら適当に「メメックス(memex)」とでもよんでおこう。メメックスとは、個人が自分の本・記録・手紙類をたくわえ、また、それらを相当なスピードで柔軟に検索できるように機械化された装置である。

-p82 1章 われわれが思考するごとく (Vannever Bush)
--出典: 思想としてのパソコン
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