狂気の歴史―古典主義時代における
文芸復興期の空想上の風景のなかに、ひとつの新しい事物が出現し、やがてそれは特権的な位置を占めるようになる。…阿呆船…〈アルゴ船物語〉という古い作品から借用されたに違いない文学的創作であって…そうした船に関する創作が流行する。…これらの空想的あるいは嘲笑的な船のうち、阿呆船だけが現に実在した唯一の船である。実際、気違いという船荷をある都市から別の都市へはこんでいた船が実在したのだった。…重要な都市では、相当な人数の狂人が…連れて来られ、出身地の町をみずからの存在で浄化し、連れてこられた先で「放たれた」のだと考えられるだろう。…狂人たちのこの往来、彼らを放逐する行為、彼らの出発と乗船、こうした事態は単に社会的効用や市民の安全という次元だけの意味をもつにとどまらない…。宗教儀礼にいっそうつながっている他の意味もたしかに現存していた…。(p.25-27)
--出典: 狂気の歴史―古典主義時代における
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