十六世紀末と十七世紀初頭…の文学は、自己を探求する理性を制御しようと務めながら、狂気の現存、理性の狂気の現存を認知し、それを取り囲んで攻め、最後にはそれを征服する一つの芸術である。バロック時代の動き。…まず第一は、空想的な同一化による狂気…。さまざまの空想が作者から読者へ伝えられるわけだが、前者では幻想だったものが後者では心象となり、作家の巧妙なやり口がごく素直に現実の姿として受け入れられる。…芸術作品における現実と想像の関係についてや、またおそらく、幻想的な虚構と錯乱のもたらす魅惑のあいだにある混沌とした交渉についての不安感がそっくり見られるのだ。「芸術の創出は、錯乱した想像力の賜物である。画家や詩人や音楽家の思いつきとは、彼らの狂気をいいあらわすために礼儀上、手加減がくわえられた名称にほかならぬ」(p.52-53)
--出典:
狂気の歴史―古典主義時代における