人間の建設 (新潮文庫)
評価 : (4.0点)

 素読の話がよかったね。むかし寺子屋では素読をやっていたらしい。それで『論語』なんかをよくやったから「論語読みの論語知らず」ということばができたというんだけども、このことに関しての小林秀雄の言葉にじゅんときた。
――引用――
 暗記するだけで意味がわからなければ、無意味なことだと言うが、それでは「論語」の意味とはなんでしょう。それは人により年齢により、さまざまな意味にとれるものでしょう。一生かかったってわからない意味さえ含んでいるかもしれない。それなら意味を教えることは、実に曖昧な教育だとわかるでしょう。丸暗記させる教育だけが、はっきりした教育です。そんなことを言うと、逆説を弄すると取るかも知れないが、私はここに今の教育法がいちばん忘れている真実があると思っているのです。
――引用終わり――
 さすがに丸暗記が一番だという話には手ばなしで賛同できないが(この後「論語」も「万葉」と同じように「すがた」なのだという話が続く)、こうはっきりしたことを堂々と言われると気持ちがいい。


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