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中学のときに国語の先生に買わされた、生まれてはじめて読んだ文庫本のうちの一冊。 当時なぜこの本を選んだのかというと、まず名前がおもしろかったからである。「怪談」というタイトルと「ハーン」という作者の名前のギャップがおもしろかったので、「小泉八雲」だったら買わなかったかもしれない。そういえばルナールの『にんじん』と迷っていた。 また、おれは同級生たちが好んでする「怖い話」が大の苦手だったから、慣れるために読もうというつもりもあった。小説なら怖くなったら中断できるからである。 林間学校のとき、けしからんことにおれの寝る部屋に大勢集まって「怪談話をやろう!」ということになってしまい、すぐに廊下に逃げた。「ビビってんのかよ!」の罵声に「ビビって何が悪い!」と飛び出したはいいが、誰も歩くものもない長い廊下は空調が古いせいかなま暖かくひどい湿気で、くもった大きな窓ごしにはライトにてらされた森の深い陰影が、角部屋ゆえに見まいとしても視界に入ってくる。これはこれで怖いじゃねえか、と後悔したのをよく覚えている。でも部屋には戻らず、話が終わるまでドアの前で座っていた。 ハーンの『怪談』はあまり怖くはなく、むしろおもしろかった。今でも手元にあるので、たまに読んでいる。
中学のときに国語の先生に買わされた、生まれてはじめて読んだ文庫本のうちの一冊。
当時なぜこの本を選んだのかというと、まず名前がおもしろかったからである。「怪談」というタイトルと「ハーン」という作者の名前のギャップがおもしろかったので、「小泉八雲」だったら買わなかったかもしれない。そういえばルナールの『にんじん』と迷っていた。
また、おれは同級生たちが好んでする「怖い話」が大の苦手だったから、慣れるために読もうというつもりもあった。小説なら怖くなったら中断できるからである。
林間学校のとき、けしからんことにおれの寝る部屋に大勢集まって「怪談話をやろう!」ということになってしまい、すぐに廊下に逃げた。「ビビってんのかよ!」の罵声に「ビビって何が悪い!」と飛び出したはいいが、誰も歩くものもない長い廊下は空調が古いせいかなま暖かくひどい湿気で、くもった大きな窓ごしにはライトにてらされた森の深い陰影が、角部屋ゆえに見まいとしても視界に入ってくる。これはこれで怖いじゃねえか、と後悔したのをよく覚えている。でも部屋には戻らず、話が終わるまでドアの前で座っていた。
ハーンの『怪談』はあまり怖くはなく、むしろおもしろかった。今でも手元にあるので、たまに読んでいる。