革命的群衆 (岩波文庫)
評価 : (4.0点)

 すっかり動きがとまった感があるが、おれは回復したので続ける。読んだ本はもう少しだけあるし、適当にレビューしてしまったものを多少書きなおすかもしれない。まあやらないかもしれないけど。
 群衆というものに興味がある。興味と言っても肯定的に捉えているわけではなくて、たとえば海の岩場にへばりついたフナムシや乾いてひび割れた土やまだら模様などを見ていると気持ち悪くなってくるように、都会の身動きできないほどの人ごみにかめはめ波をぶちこみたくなるように、多勢に無勢を卑怯と感じるように生理的な嫌悪でもって捉えていた。しかし考えて見るとこれらはどれも「群衆」ではない。
 革命的群衆というのは、今日本で言えば反原発のデモのようなものである。その主張内容の是非はおくとして、別にデモ自体には反対ではない。たまに都心ででっくわす長い行列が通行の邪魔だと感じることはあるが、嫌悪はしていない。おれが嫌悪している群衆というのは、ギュスターヴ・ル・ボンが『群衆心理』で扱っているような付和雷同などを指すのだが、ルフェーヴルはこれを批判している。ル・ボンの場合はどこかにリーダーがいてそれが伝播していくことを問題にしているが、ルフェーヴルは個人の心理と群衆の心理は別物だと述べているのである。
 まあでもどちらも読んでおいて損はないと思う。ル・ボンの議論が「群衆」を指すものとして誤りだったとしても、すなわちその内容までもがすべて誤りだというのは早計だし早漏だろう。


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