免疫ネットワークの時代―複雑系で読む現代 (NHKブックス)
資源と環境を守りながら暮らしを豊かにする。そのためにやるべきことが、ようやく見えてきました。再生可能資源をうまく使いながら、ゴミの出ない生態系に学ぶ。そして「モノとエネルギーはつつましやかに、知識と学習は旺盛に」という新しいライフスタイルを育てていく。これが実践面です。〈略〉
理論面としては、新しいライフスタイルを支援する経済学を育てる、という課題があります。たとえば成長の経済から定常の経済に移るというのもその1つです。定常状態の経済学の建設です。ここでいう定常というのは、物質とエネルギーレベルでのことです。(p55)
仕事と学習と革新がそれぞれ別のものではなくて、おたがいにつながっていて、その基盤にはインフォーマルな実践の共同体がある。これが新しい時代の組織像です。これをふまえると、組織が創造的であるために必要なことは、創造のための新しいプロジェクトを作るのではなくて、すでに活動しているインフォーマルな実践の共同体を見つけ出して、これを支援することなのです。(p36)
仕事というのは個人のフォーマルな関係の総和ではなくて、「インフォーマルな実践の共同体」が担っているということができます。そしてこの共同体は語りの共同体であり、学ぶための場にもなっています。さらにこの共同体で、徒弟制がくりひろげられ、寺子屋も開かれます。もっと重要なのは、こうした共同体こそが革新を可能にしている場でもある、という点です。画期的な技術の革新や、大胆な将来プランは、インフォーマルな実践の共同体が可能にしてきたという研究も報告されてます。(p36)
語りが大切だということは、もう一つ大事なことにつながっていきます。仕事をするのは個人でなくて、むしろ仲間との共同なのだという点です。語りを進めるにはどうしても仲間が必要です。そしてうまくいっている仕事は、仲間で活気をもって行われています。ところが建て前として、仕事は個人がやるもので、孤立した個人の仕事の総和として、全体の仕事が考えられます。そのことは、仕事の評価が個人を単位にして行われていることにも現れています。
もっとも孤立してなされていると思われる研究活動でさえも、仲間との日常的な語りが不可欠です。それも多くはインフォーマルな語り合いとして。仲間と共同して研究をする文化があるところに、おもしろい研究者が育っているようにみえます。(p28)
フォーマルな関係だけで組織が存在しているのでも、また仕事がなされているのでもないことを、私たちはよく知っています。組織図には表れないインフォーマルな関係が、仕事を進めるうえでの貴重な手がかりになったり、また励ましになったりしてきました。そして仕事がより複雑になってきているいま、むしろインフォーマルこそ中心で、フォーマルな組織がばらばらになってしまわないための境界条件を与えているだけ、という時代になってきているように思われます。(p35)
仕事は決められた仕方で進めるもので、偶然性とはいうのは仕事にとっては本来のものでない、と私達は考えがちですが、実際には偶然性が私たちの仕事を支えているといってもよいでしょう。明日もまた頑張ろうという気になるのは、たまたま出会った友人や昔の仲間から得た、励ましのためであることも多い。仕事は必然の手順にしたがわなくてはならないでしょうが、その必然はより大きな偶然が支えているというのが、ありのままの仕事の場のようです。(p34)
いま広い範囲で「学ぶ共同体」が生まれてきています。これまでの考えの枠組みでは未来が描くなってきて、学ぼうという意欲が人びとの間に広がっているのです。グローバルな学習社会になってきている、とも言われます。この共同体の特徴は、現在の学校という制度とはちょうど逆に、学びたい人たちが集まって共同体を作り、教えてくれる人を探すところにあります。(p32)
経済は成長することが当たり前だと考えられてきました。でも考えてみると、ひたすら成長する生きものは、ガン細胞でもないかぎり存在しません。いま私たちが営んでいる経済の仕組みは、長い歴史からみたら過度的なもので、成長でなくて成熟あるいは定常の経済にたどりつくのが課題なのでしょう。このことは誰の目にも明らかになりつつあります。(p.43)
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