リトル・ピープルの時代

著者
出版者
幻冬舎
価格
¥2,310
(5.0点)
日本社会のあり方を、文学やサブカルチャーを通して解釈する試み。ジョージ・オーウェルの一九八四年で描かれたビッグ・ブラザー的な世界が、いまや村上春樹の1Q84で描かれるリトル・ピープル的な世界へと変遷し、サブカルチャーやポップカルチャーがそれを的確に解釈/表現しており、表出しているというのが、この本の主張だ。

■ ポジティブな感想

強力な力を持った絶対的な正義と悪が対立するのが、ビッグ・ブラザー的な世界と定義し、敗戦後の高度成長時代と重なる冷戦時代は、まさにビッグ・ブラザー的世界であり、そのころに登場したウルトラマンは、その象徴であると、著者は主張する。また冷戦時代の終焉あたりの「おニャン子クラブ」も、メディア側に完全にコントロールがあったという点でビッグ・ブラザー的である、とする。このあたりのメタファーはたしかに成立しそうに見えし、このあとの議論の展開を分かりやすくしている。

持っている力が小さいながらも、世界に影響を与える主体者が多数いて、利害関係も影響範囲も複雑な世界を、リトル・ピープル的な世界と定義する。つまり高度成長期以降から現在。テロリスト、小国での小競り合いや代理戦争、米ソ以外の台頭などが、この時代の特徴で、悪の組織の一員だった仮面ライダー、そして、複数の正義が存在する平成仮面ライダーは、リトル・ピープル的であるという。AKB48 は供給側に100%のコントロールはない、とも対比する。

だからこそ、いまどきの日本を変えたいとき、大きな革命などは役にたたないとする。革命の対象となる大きな力がそもそも存在しない、ということなのだろう。一方でそれは小さな変化、自分たちが影響を与えられる分野/領域や、隣接した分野/領域での活動によって、すこしずつ世界をハックするしかない、という主張だ。

ストールマンは、もともとビッグ・ブラザー的なものに対抗する行為としてコピーレフト活動を始めたのかも知れないけれど、現在の OSS はどちらかというと、ごく身近な問題を解決すところから、かなり利己的に始まっているように見える。そして、それは効果のある方法になっているように見える。というような考察のフレームワークとして使える本だ。

■ ネガティブな感想

慣れていないと文章がくどくて読みにくいかも知れない。〇〇すなわち☓☓つまり▽▽みたいな言い回しが多い。そして、たくさんの例が必要だとしても、長い。文学の評論というのは、こういう文体で書くものなのか、著者の趣味なのか、くどくて長いなぁという印象がぬぐえない。

さらに議論を展開するロジックの前提となる根拠が希薄だ。村上春樹がリトル・ピープル的世界を表現する試みに失敗していると書いているけれど、そもそも村上春樹は試みたのか、と。試みていないなら失敗もしないし、表現できないことに何の問題もない。また、サブカルチャーが、この社会を反映しようとし、モデルを抽出しようとしたかどうかも分からない。現実世界と乖離すると、リアリティが減るけれど、それを言い出したら、仮面ライダーとかいうコンセプトが破綻する。

あまりにたくさんのセグメントができてしまい、ビッグブラザー的支配をやりにくくなった、というシンプルなモデルで、世界を表現できるのかも知れない。

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本書は、村上春樹による著作とポップカルチャーを対象として、大きな物語崩壊後の日本における社会構造を焙りだしている。
2章のポップカルチャーを対象とした分析は、論証として腑に落ちない面も多々あるが、それでもやはり惹きつけられるものがある。
ただし、序章と終章で述べているリトル・ピープルの時代の『壁』と福島原発との関連性がみえてこない。この両者に繋がりがあるのなら、リトル・ピープルの定義が曖昧なのでは…と思わざるを得ない。福島原発の記述がなければよかったのに。。

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(4.0点)
宇野常寛くん節全開の本。「いま、ここ」以外の外部世界のない、皆がグローバルネットワーク&グローバル経済に繋がれて「小さな父親」にならざるを得ない現在。そのような中では、正義と悪の位相は曖昧化し、それぞれの正義と正義は衝突せざるを得ない。そんな世相、事象の核心を、村上春樹小説や仮面ライダー、AKBなどをモチーフに描いており痛快。個人的には仮面ライダーにからめた記述が始まってから、より惹き込まれた。仮面ライダーとは、かくもポストモダン、かくもアヴァンギャルドだったのね。

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