リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理

ラドンはある種の岩や土の中で自然に生み出される。ラドンがもたらす死は人気のない場所でひっそりと起き、誰にも責任がかからない。だから「腹」はやり過ごす。ポール・スロヅィックの調査では、核廃棄物の廃棄場のような放射能源について考えると恐ろしさのあまり膝が震える人が、ラドン ― 間違いなく、核廃棄物によってこれまで亡くなった人より多くの人がラドンによって亡くなっている ― を、非常にリスクが小さいと評価した。自然は人を殺すが、自然に罪はない。火山にこぶしを振り回して怒る人はいない。熱波を責め立てる人はいない。そして、激しい怒りが存在しないため、自然によるリスクは人工のリスクに比べて脅成がずっと小さく感じられるのである。
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「たとえ一人でも救われるならそれは価値がある」という語句は、リスクを減らすために考案された新しい計画や規制に関してよく耳にするものである。それは本当かもしれないし、そうでないかもしれない。たとえば、その計画が一億ドルかかり一人だけ救うなら、ほぽ間違いなく価値がない。なぜなら、一億ドル使って二人以上確実に救う方法はほかにたくさんあるからである。
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つまり、実例を容易に思いつくことができればできるほど、より一般的であると判断する。注意しなくてはならないのは、「腹」の直感的判断に影響を与えるのが実例そのものではないということだ。思いつく実例の数でもない。いかに容易に思いつくかである。
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