しかけ人たちの企画術

ぼくはうちのスタッフに、企画を考えるときは、「その企画は新しいか、その企画は楽しいか、その企画は誰を幸せにするのか」という3つのことを自問して欲しいと、いつも話しているのですが、それは企画のよしあしを推しはかるためだけではありません。企画することの意義をもういちど噛みしめてほしい、という思いもあってのことなんです。
「誰を幸せにするのか」。こういう視点が、いろんな意味で企画という仕事には必要なんだろうと僕は思いますね。 小山薫堂(P281)
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そしてややカラミがちに、「ぼくがどうして寅さんが好きか知ってますか」と、山田監督に自分が寅さん映画が好きな理由を語り出したんです。
それによると、なんでも、彼のお父さんはバスの運転手をしていたそうです。堅物で、めったに笑わない人なのだけど、お酒を飲むとちょっとだけ笑ってくれる。ただ、酒乱の気があって、お母さんに暴力を振るってしまう。彼はそれがイヤで、お父さんがお酒を飲み始めるといつも別の部屋に逃げていました。
でも、そんなお父さんが、お酒を飲まなくても唯一笑う瞬間があった。それが寅さんの映画を見ているときでした。その友人は、「お母さんには内緒だぞ」といいながら、お父さんが映画館につれていってくれるときが、いちばんうれしかったそうです。
とはいえ、お父さんは不器用ですから、いつも映画館の席をうまく取れずに立ち見になる。まだ子供だった彼の背の高さではスクリーンが見えません。だから、ずっとお父さんの顔を見上げているんです。寅さんを見て笑っているお父さんと、それを見上げる彼。お父さんが笑うたびに、自分も幸せな気分になる・・・・・・。
「だからぼくは寅さんが好きなんです」とその友人はいいました。 小山薫堂(P280)
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いまお話したことにもちかいのですが、ぼくの発想のきっかけとなっている考え方のひとつに「勝手にテコ入れ」というものがあります。どういうものかというと巷にある他人のアイディアを見ながら、自分だったらこうするのになと、頼まれてもいないのにアイディアを勝手に付け加えて、テコ入れを考えるんです。まぁ、一種の発想トレーニングですが、こういう考え方を日常的にするようになってから、ぼくの仕事に広がりが出てきたような気がします。 小山薫堂(P262)
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要するに人間は、自分の知りたいことや望むことのすべてを言語化できているわけではないんですよ。言語化できているのは、本の一部にすぎません。だからこそ、「希望」という店と出会って良かったと感じるし、本屋でも買おうと思った本とは違う本を買ってしまったりする。言語化できていないし、意識できてもいないのだけど、好きなことや知りたいことがじつはいっぱいあるんです。 嶋浩一郎(P220)
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要するに、テクノロジーは企画ではなくて、企画を遂行するための手段なんです。これに対して、プランニングとはだれかに話したいと思えるネタを考えること。ツイッターなどのテクノロジーがあれば、それが広がりやすいということです。
だから、あくまで肝心なのは、人の気持ちが動くようなおもしろいネタを考えられるかどうか。なぜこれで人の気持ちが動くのか、の「なぜ」の部分を考えるのが企画です。とくに新しいテクノロジーがからんだときに勘違いが起こりやすいのですが、手段と企画は必ずわかえて考えるようにしたいですね。 嶋浩一郎(P202)
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ちなみにぼくは、企画とは「世の中の暗黙知を言語化したもの」だと思っています。世間が何となく感じているけれど、まだ意識できていない欲望や思いを言語化あるいは体現したもの。
ビジネスの企画でなくても、世の中に受け入れられているものには、そういう傾向がありますよね。たとえば、みんながなんとなく、「最近、蒼井優みたいな格好した子が多いなぁ」と感じていたところに「森ガール」という言葉ができて一気に浸透したり、単独行動する女性が増えてきたなと感じ始めたところに「おひとりさま」という言葉がでてきて流行ったり。「草食系男子」「リア充」もそうだし、古いところだと「朝シャン」や「メル友」「公園デビュー」なんかもそうですよね。 嶋浩一郎(P202)
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箭内 会議を否定するわけじゃないんだけど、改まって「さぁ、どうしましょうか」って座っても、あんまり意味ないと思うんだよね。むしろ、稗田とそば食っているときにいい企画が浮かんだりするもの。
稗田 そうですね。
箭内 でも、だからといって、そばを食べながら雑談を録音すればいいかっていうとそうじゃなくて。極端なことをいうと、稗田がずっと黙ってても、それはそれでかまわない。要は、聞き役がいないと浮かばないってことなんだな。
(略)
箭内 聞き役がいると、その人が企画に対してどう反応するかがわかるってこともあるけど、それ以上に内容を口に出した瞬間の空気の振動みたいなところも結構気にしているかも知れないな。
(P138)
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しかもぼくの経験からいうと、ひとつの分野で見る力がついてくると、ほかの分野でもそれなりに応用が効くようです。優秀な建築家がグラフィックの世界を深く理解していたり、すぐれた写真家が、タイポグラフィについても非常に繊細であったり、という話をよく耳にしますが、きっと彼らは専門ジャンルでの「見る力」をうまく応用しているのだと思います。 中村勇吾(P100)
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といっても、グラフィックのデザインみたいに、"面"を美しく構成することに特別なこだわりをもっているわけではありません。ウェブサイトの見た目の美しさはもちろん気になりますが、それよりはその場を統制するルールや、秩序をプログラミングすることの方に興味がある。ウェブにかかわりはじめたころから、そこは変わりません。 中村勇吾(P66)
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この、まさに1000本ノックのような経験をしてみて、ある方程式を解くときには、それ自体のことばかりを考えていては行き詰まるんだということがわかったんです。ひとつのことをコツコツと努力していくのは大切なことですが、それだけではどうしてもたどり着けない境地がある。Xをとかなければいけないときに、Xのことだけを考えていては解けない。むしろXの外のことを考えれば解けるというんだから、不思議な話です。 後藤繁雄 (P58)
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そもそもネットのコンテンツは、テレビとちがっていつでも自由に見られるわけだから、基本的には時間の制約とは無関係ですよね。でも、テレビ番組をハードディスクに録画すると見ないで放置しまうことが多くなるのと同じように、いつでも見られるものは、じつは有難味が小さいんです。
となると、逆説的ですが、時間の制約から自由なネットでも、もっとも有難味があるのは「生配信」ということになる。つまり放送も通信も、仕組みは違えども、企画のよしあしは「いかに人の生活から時間をもぎ取るか」で決まってくるんです。要するに、きょう見たくなるコンテンツ、今見ないとダメだと思わせるコンテンツをつくれるかどうか。そういう勝負になると思うんですよ。そう考えると、テレビのコンテンツのほうに分があるんじゃないか。 吉田正樹(P33)
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