モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

P.104

 つまり、非ルーチンで創造的な仕事への報酬を、「思いがけない」予期せぬ報酬に制限すれば危険水域に入り込むおそれは少ないということだ。さらに、次の「二つのガイドライン」に従えば、もっと効果的に実践できるだろう。
 一つは、具体的でない報酬を検討することだ。賞賛やポジティブなフィードバックは、金銭や商品よりもずっと害が少ない。デシの当初の実験や、それ以降の調査に関する分析から、「ポジティブなフィードバックは、内発的動機づけを高める効果がある」と判明している。したがって、デザインチームが人目をひくポスターを制作したら、オフィスへ足を運び、こう伝えればいいだろう。「すごいじゃないか!今回のポスターの出来は実に素晴らしいよ。イベントの集客に大きな役割を果たすにちがいない。ご苦労さま。ありがとう」。取るに足らない、単純な言葉に聞こえるかもしれないが、大きな効果があるはずだ。
 二つ目は、有効な情報を与えることだ。外発的な動機づけは、創造性を損ないかねないものの、「情報(※ 注:ルビはフィードバック)や可能性を与える動機づけは、(創造性に)好影響をもたらす」と、アマビルは気づいた。戦場では、誰もが自分の仕事ぶりに対する評価を知りたいと思っているものだ。だがその情報が、無言のうちに相手の行為を操作しようと意図したものではない場合に限る。だから、デザインチームにこう言ってはいけない。「ポスターの出来は素晴らしかった。まさにわたしが依頼したとおりに仕上げてくれた」。代わりに、彼らの仕事に関する有意義な情報を与える。具体的なこと(たとえば「色使いがよかった」)にフィードバックの焦点を合わせるほど、また、特定の結果を達成したことよりも、努力(「あれはたいへんだったんじゃない?」)や構想(「あの構図にはしびれたね!」)に関する賞賛が多いほど、効果的になる。
 要するに、クリエイティブで右脳的な、ヒューリスティックな仕事に対して「条件つき」の報酬を与えると、あなたの立場がおぼつかなくなる。結果に対する「思いがけない」報酬を用いるほうがよい。賞賛やフィードバック、有益な情報を与えるのなら、なおさらよい(このアプローチを視覚的に描いた、次ページのフローチャートを参照してほしい)。
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P.92

問題を解いたらお小遣いを与えられる子どもは、簡単な問題を選択しがちになり、学習効果が上がらない。短期的な達成に報酬を与えれば、長期的な学習能力の向上は考慮されなくなるのである。
 外的な報酬が重要視される環境では、多くの人は報酬が得られる局面までしか働かない。それ以上は働かなくなる。たとえば本を三冊読めば商品がもらえるのなら、多くの生徒は四冊目の本を手に取りはしないだろう。ましてや、生涯にわたる読書の習慣など身につくはずがない ー ちょうど、四半期の業績目標を達成した幹部が、それ以上の利益追求に興味を失い、会社の長期的な健全性についてじっくり考えたりはしないように。
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P.88

お小遣いで釣って息子にゴミを捨てさせる ー するとほぼ確実に、その子はもう二度と、お小遣いなしではゴミを出さなくなるだろう。最初の金額のもたらした興奮が冷めてきたら、相手を従わせるために、やがてその額を増やさざるをえなくなる。
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P.83

 外的な数値だけを重要な目標とし、それに報酬をリンクしたときに問題となるのは、たとえ倫理にもとる道であっても、そこへいたる最短ルートを選ぶ者が現れる、という点だ。
 現代生活につきもののスキャンダルや不正行為の大半は、この「近道」が関連している。企業役員は業績手当を得るために、四半期所得の数字を調整する。中等学校のカウンセラーは、最上級生が大学に入学できるように、生徒の成績証明書を改ざんする。アスリートは、記録を伸ばすために、そして高額な業績手当を得るために、ステロイドを注射する。
 こうしたアプローチを、内発的動機づけによる行動と比較してほしい。得られる報酬がその活動自体 ー 学びを深める、顧客を喜ばせる、ベストを尽くす ー であるとき、安楽な近道は存在しない。目的地に達するには、王道を行くしかない。ある意味、倫理に反した行動はとれない。不利益を被るのは競争相手ではなく、最終的には自分自身だからだ。
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P.68

 数学の勉強をさせようとして、問題集を一ページ終えるごとにお小遣いを与えたとしよう。するとその子はほぼ確実に、短い間なら熱心に勉強するが、長い目で見れば数学そのものへの興味を失う。仕事に情熱を燃やす工業デザイナーに、もっとよい成果を期待して、製品がヒットすれば報酬を与えると約束する。当面の間、彼はきっと我を忘れるほど仕事に没頭するはずだ。だが、やがて長期的には仕事に対する興味を失うだろう。行動科学の有力な教科書にあるように、「人は、他人の意欲をかき立てて行動を促し、そこから利益を得ようとして報酬を用いるが、かえって活動に対する内発的動機づけを失わせるという、意図せぬ隠された代償を払う場合が多い」。
 これは、社会科学の分野において、もっとも揺るぎない発見であり、同時に、もっともないがしろにされている発見でもある。
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X理論は、人間は努力を敬遠し、金銭と安全のためだけに働くので管理が必要だ、という前提に立つ。Y理論は、仕事は人間にとって遊びや休息と同じくらい自然で、自発性や創造性は誰にでも備わり、本気で目標を目指すなら人は責任も求めるはずだ、という前提に立っている。
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かの昔にソクラテスが語った、真に自由な人間とは自制が及ぶ範囲においてのみ自由だ、という言葉はパラドックスのように聞こえる。自分自身を統制できない者は、自分たちを支配してくれる支配者を見つけなくてはならない。
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頭がよいと褒めるのではなく、努力や取り組み方を褒める。
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人間は単に、目の前のニンジンを追いかけて走るだけの馬とは違うと私たちは知っている。子どもたちと一緒に時間を過ごしたり、自分が最高に輝いている姿を思い起こせば、受け身で命令に従うだけの従順な姿勢が人間の本来の姿ではないとわかる。人間は本来、活発に積極的に活動するようにできている。人生で最も豊かな経験は、他人からの承認を声高に求めているときではない。自分の内なる声に耳を傾けて、意義あることに取り組んでいるとき、それに没頭(フロー)しているとき、大きな目的のためその活動に従事しているときだ、と私たちは知っている。
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高い目標を掲げて達成する人が、不安や憂鬱に取りつかれる理由の一つとしては、良好な人間関係の欠如が挙げられる。金儲けや自分のことに精一杯で、愛情や配慮、思いやり、共感など、本当に大切なことにかける余裕が人生にはないのだ。
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ある目標(この場合は、利益指向型の目標)を達成しても幸福に影響を与えず、実際には不幸を助長する、とこの調査は示している。
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自然の法則は必然なので、好きなようにさせれば、子どもたちはフローを見つけ出す。
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仕事とは関連性のない『遊び』だけを楽しめて、人生で取り組む真剣な仕事を耐えがたい重荷として耐えなくてはならない、と信じる理由はもはや存在しない。仕事と遊びの境界が人為的なものだと気づけば、問題の本質を掌握し、もっと生きがいのある人生の創造という難題に取りかかれる
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懸命な努力の重要性は理解されやすいが、目標を変えずにたゆまず時間をかけて努力を続けることの重要性は、あまり認められていない…どの分野においても、高い目標を成し遂げるには、才能と同じくらい根気と根性が重要となる
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「かつては天賦の才だと思われていた多くの素質が、実は、少なくとも一〇年間厳しい訓練の結果であると判明した」。スポーツでも音楽でもビジネスでも、マスタリーには長期間にわたる努力が必要とされる。
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従業員の"しなくてはならない"ことと"できる"ことが一致しないと、職場で要求不満が起こりやすい。課せられた業務が個人の能力を超えると、不安が生まれる。能力以下の業務を課せられれば、退屈になる。だが、能力と業務がぴったり一致した場合には、素晴らしい結果が生まれる。これがフローの本質である。
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どんな仕事であっても、遅刻票やタイムレコーダー、工業化社会の時代遅れの思考を、もう捨て去るべきです。
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すばらしいデザインを生み出すために必要な五つの信条を、簡潔に説明したことがある。その中の一つに、「自分の作ろうとするものは自分が決める」とある。
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「十分な給与を払わなければ、社員は会社から離れていきます。しかし、それにもまして、金銭は人に意欲を与える要因ではないのです。お金よりも重要なのは、このようにクリエイティブな人を引きつける仕組みなのです。」
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二一世紀は、「優れたマネジメント」など求めていない。マネジメントするのではなく、子どもの頃にあった人間の先天的な能力、すなわち「自己決定」の復活が必要なのである。
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わたしにとってはパートナーシップです。従業員は経営資源ではありません。パートナーなのです。
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社員が最高の仕事をできる状況を作り出すことが、マネジメントの本質である。
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報酬に集中するあまり、新しい解決策が視野に入らなかったからだ。これまで見てきたように報酬は志向の"幅"を狭める傾向がある。さらに外発的動機づけーーとくに、具体的な[交換条件つき]の動機づけ--も、思考を萎縮させる恐れがある。遠くにある者が目に入らなくなり、すぐ目の前にあるものしか見えなくなる。
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人間は本来「自立性を発揮し、自己決定し、お互いにつながりたいという欲求」を備えている。その欲求が解き放れたとき、人は多くを達成し、いっそう豊かな人生を送ることができる
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内発的動機づけーーその活動に興味を引かれ、やりがいを感じ、夢中になれるからその活動をしたい、という原動力ーーが、高いレベルの創造性を発揮させるためにはきわめて重要である。
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絵画にしろ彫刻にしろ、外的な報酬ではなく活動そのものに喜びを追い求めた芸術家のほうが、社会的に認められる芸術を生み出してきた。結果として、外的な報酬の追求を動機としなかった者ほど、外的な報酬を(障害では)得たことになる。
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いつものいうわけではありませんが、他人のために作品を制作しているときには、喜びを感じるよりも、「仕事」をしていると感じることが多くなります。自分のために制作しているときは、創作に純粋な喜びを感じて、時間が経つのも気づかずに夜通しでも取り組んでいられます。注文作品は、自分を抑えなくてはなりません ー クライアントの希望に沿うように,気を配る必要があるからです。
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報酬には本来、焦点を狭める性質が備わっている。解決への道筋がはっきりしている場合には、この性質は役立つ。前方を見すえ、全速力で走るには有効だろう。だが、「交換条件つき」の動機づけは、ロウソクの問題のように発想が問われる課題には、まったく向いていない。この実験結果からもわかるように、広い視野で考えれば、見慣れたものに新たな用途を見つけられたかもしれないのに、報酬により焦点が絞られたせいで功を焦ってそれができなかったのである。
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人は、他人の意欲をかき立てて行動を促し、そこから利益を得ようとして報酬を用いるが、かえって活動に対する内発的動機づけを失わせるという、意図せぬ隠された代償を払う場合が多い
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数学の勉強をさせようとして、問題集を一ページ追えるごとにお小遣いを与えたとしよう。するとその子はほぼ確実に、短い間なら熱心に勉強するが、長い目で見れば数学そのものへの興味を失う。
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2002年、スコットファーカートマイクキャノン=ブルックスという、大学を出たばかりで経験の浅いオーストラリアの若者が、クレジットカードで1万ドルを借りて、ソフトウェア会社を立ち上げた。大胆にもその社名を、肩で地球を支えるギリシャ神話の巨人アトラスにちなんで、アトラシアンと名付けた。二人は、企業ソフトウェア業界のトップと肩を並べるまでになりたいと思っていた。(中略)アトラシアンは現在、年商3500万ドルを上げ、シドニー、アムステルダム、サンフランシスコのオフィスにおよそ200人の従業員を抱えるまでになった。
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