ビジネスで失敗する人の10の法則

わたしは西ドイツで現地事業の幹部との会議に出席し、本社国際事業部門の責任者でドイツ人のクラウス・ハレも同席した。いつも通り、翌年の事業計画を検討したとき、ドイツの経営チームは大型のプロジェクトを提案した。五億ドルを超える資金を、民主化されたばかりの東ドイツに投資する計画であった。これだけの資金を投じれば、そのとき策定の過程にあった全社の予算が大きく狂うことになる。わたしはこの計画を拒否したが、そのときの姿勢は頑なで、ひどかったようだ。会議の後、ハレが私のところに来て、ドイツ事業の責任者が辞任したがっているという。
わたしはショックを受けた。なぜだ。
ハレはこう説明した。「意見を聞こうともしなかったからです。投資の大部分はドイツのボトラーが負担します。そもそも、東ドイツの可能性をご存じない。訪問したこともない。これが大きな機会になりうるかどうか検討するまでもなく、頭から拒否してしまった」P80
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だから、失敗したのであれば、柔軟性を否定すべきだ。しかし、明確にしておきたい点がある。柔軟性自体に価値があるわけではないことだ。また、柔軟性をいいたてても、気の弱い経営者があれこれ迷うばかりで厳しい決断を下さないときの隠れ蓑にはならない。柔軟性と適応力は、企業の指導者に不可欠な資質であり、管理能力や業務の能力、技術力といった個々の能力を超えるものである。柔軟性とは状況を調べ、必要に応じて、状況の変化にいち早く適応する事であり、つねに深く考えることが不可欠だとわたしは信じている。要するに、ダーウィンがいう適者生存のカギになるのが柔軟性と適応力なのである。 P59
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ウォルター・アイザックソンが書いたアインシュタインの素晴らしい伝記に、プリンストン大学での逸話が紹介されている。新しい研究室に何が必要かと聞かれて、こう答えたという。机と椅子、紙と鉛筆、それに特大のゴミ箱がいる。「大量に間違えて、捨てるから」というのだ。ビジネスの世界では、スティーブ・ジョブズがリサやパワー・マックキューブで失敗したのは意味があったと言えるはずである。こうした冒険のためにアップルではきわめて創造的な社風が維持され、アイフォーンなどの大ヒット商品が登場したからだ。全米の経営大学院で、やってはならないことの事例研究では、典型的な失敗例としてエドセルやドーナツ盤レコード、ニュー・コークなどが取り上げられているが、これらの間違いすら、意味があったとも主張できる。これらの失敗は、後に経営陣の失態について教えてくれる貴重な教訓になっているが、要するにリスクをとってうまくいかなかった例なのである。 P37
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コカ・コーラ社で語り継がれてきた話がある。ウッドラフと法律顧問に、会社でどういう仕事をしているか、皆に説明するよう求めた。法律顧問は一瞬もためらうことなく、こう答えた。「コカ・コーラを売る仕事をしています。」
この点がわたしにとって、いつも最優先すべき任務であった。わたしはコカ・コーラ社の全体で、そして世界のコカ・コーラ・システム全体で、営業を最優先する強固な考え方を奨励した。どのような支出をする際にも、どのような部門を作る際にも、どのようなプロジェクトを行う際にも、かならず基本的な問いに答えなければならない。顧客を獲得し、顧客に奉仕するのに役立つのかという問いである。この問いに対して、明確に力強く「イエス」と答えられない場合には、どのような支出でも、どのような取り組みでも止めなければならない。 P147
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一九七〇年代前半に、心理学者がある実験を行った。競馬の予想屋にレースの結果を予想してもらうのだが、そのときに戦績や負担重量、血統など、提供する情報の量を変えていった。面白いのは、提供した情報がわずか五種類のときより、四〇種類だった時の方が、予想成績が悪かったことだ。じつにさまざまな状況で、情報が少ない方がよいというのは事実だ。 P106
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フォードがアメリカで第一位の資産家になったのは、自動車を発明したからではないし、大量生産方式を発明したからでもない。大量生産方式の改良を続けて、自動車を生産することに一生をかけたからだ。ヘンリー・フォードが天才だと言えるのは、大量消費市場を直感的に理解していたからだ。コストを引き下げていけば、自動車が金持ちの道楽から大衆の輸送手段に代わることを、当時の誰よりも見抜いていた。そのために、ふたつのリスクをとっている。第一に、自動車一台あたりの利益を圧縮しつづけ、販売台数を増やせるようにした。第二に、一九一四年、自動車組み立て工場の労働者の平均日給が二・五ドル以下であったときに、五ドルという前代未聞の金額を支払うと発表した。 P51
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私を雇ってくれた家畜商はドイル・ハーモンであり、ミシガンのアメリカン・フットボール選手として有名なトミー・ハーモンの叔父にあたる人だ。最初の日の仕事が終わった後、ハーモンがやってきて、わたしが買った雌牛をみてまわった。かなりの数の牛は高く買いすぎていた。そこで、ハーモンが注意してくれた。「たくさんの家畜商に囲まれていて、おまえはうんと若いので、みな、お世辞をいったり、親切にしたり、気が散るようなことを言ったりする」。そういって図を取り出して説明した。「牛のどこを見るべきかがこの図にみな書いてある。誰が何を話そうとも、この基本的なチェック項目から外れてはいけない」。そして最後に、ハーモンはこういった。「人ではなく、牛をよく見るんだ」
この単純明快な助言を、私はビジネスの世界で大切にしてきたし、投資銀行の世界にいるいまも大切にしている。いつも、どのような説明を受けても、商品そのものをみるように努めてきた。簡単ではないかと思えるかも知れないが、実際に簡単ではない。自分がどれほど優秀だと思っていても、一瞬でも牛から目を離し、人に注意を向けていると、全く馬鹿げた企画に引き込まれかねない。 P118
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