星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?
お客様の要望や期待と直接向き合うのは、社長や経営幹部ではない。あくまで現場のスタッフである。お客様にとっては、自分に対応してくれるスタッフ一人ひとりの判断こそが、星野リゾートの判断である。スタッフの判断の質が、星野リゾートのパフォーマンスを決めるのである。
P.218
「さまざまな働き方を選ぶ人は、あくまで働き方の多様性を求めているのであり、報酬を必要以上に求めているわけではない。彼らが欲しているのは『自由』であって、『お金』ではない」
「もともとの形態で仕事を続けられなくなっても、形を変えて仕事を続けることができた。多様な働き方が洗選択できることは非常にありがたい。会社にとっても、ビジョンを共有するメンバーが働き続けられるので、人材育成の点から効率的だと思う。社員、会社の両方にとって意味がある」と語る。
星野は働き方について社員の声を聞き続けた。そしてケースバイケースで考えながら、会社の制度を大胆に社員のニーズに合わせることで、ユニークな働き方の仕組みを次々に作った。
「社員の気持ちや都合に会社が応えていないとこりにこそ、問題があるのではないか。会社の仕組みに辞める原因があるに違いない」。星野はそう考察した。「社員に『あるべき姿』を強要することが、退職につながっている」と映った。
「オープンの日までに、すべてを間に合わせようという気持ちは分からないではない。しかし大事なのは、長い目で見て本当にお客様が満足するサービスができるかどうかだ」
スキー場が目の前になければスキーリゾートになれないという固定観念を本気で変えよう。次の冬は、覚悟を決めて本気でスキーリゾートになる。ぜひ、もう一度、腹を決めてやってみよう。
P.160
こうしてリゾナーレのコンセプトが「大人のためのファミリーリゾート」に決まった。メンバーは短い言葉に、大人も子供もそれぞれ、リゾナーレをしっかり楽しんでもらおうという思いを込めた。
P.149
ファミリーで旅行に来た場合、親は滞在中、子供と一緒にるのが本当に楽しいのだろうか?
P.148
「日本のホテル・旅館の魅力はどんな点にあるか」という質問に対して、ファミリー客の回答は「家族サービス」「思い出つくり」が上位だったことがある。
「旅館・ホテルは本来、くつろぎの場であるはず。『家族サービス』『思いでづくり』という回答は、どこかくつろぎから離れているのではないか」
(省略)
「ファミリー客の親たちは、リゾナーレに滞在している間、本当にくつろいだ時間 、楽しい時間を過ごしていると言えるのだろうか」
P.147
『自分たちはこうなりたい』と思っているからこそ、そこへ向かおうとする力も生まれてくる。だから、スタッフの共感は非常に重要だ。
星野はメンバーが自分たちでコンセプトを考えるための手助け役に徹していた。「こういうコンセプトで行け」と指示することはなかった。「こんなふうにしろ」と命じることともなかった。あくまで議論の主役となって考えるのは、リゾナーレのスタッフ自身だった。
旧経営陣のときは、上から命令され、それに従うだけだった。仕事はやりがいのないものだった。それが星野リゾートになった途端、『自分たちでコンセプトを作ろう』と、大きく変わった。
「どんなお客様に対して、どんなサービスを提供するか」を明確にする作業である。
苦しい時期も、戦略の正しさを信じ、事業のコンセプトを守って我慢し続けた成果がようやく表れた。
サービス業には「ニッパチの法則」がある。これは「2割のリピート客が、実は8割の利益を生み出す」という収益構造を意味する。リピーターは何度も利用してくれるだけではなく、知り合いなどを連れてきてくれることがある。関連するほかの施設を利用してくれることもある。それだけに星野社長もリピート客を増やすことにこだわっている。
スタッフが自分の意見を自由に語り合うからこそ、当事者意識を持って動き、顧客満足度を高められる
星野は「同じリゾートに再び訪れてもらうのは、それだけ難しい。だからこそ、リピートしてもらえるように顧客満足度を高めることが必要だ。それだけ顧客満足度を上げるのは大切なことだ」と語った。
「青森屋のスタッフが、自分たちの取り組みに自信を持ってほしいと思った。企業にとって目標達成は大事だが、それにこだわりすぎないほうがいいときがある。今回はプロセスを重視し、『ここまで来たのだから、出そう』と決めた」
基本的な方向が定まると、具体的なサービスの中身はスタッフに任せる。それが星野のやり方だ。「現場を知るスタッフが、『お客様に喜んでいただきたい』と思うようになったとき、大きな力が生まれる。その力にはどんな専門家も勝てない」と考えるからだ。
「裏方」を自認していたゴンドラ担当の7人の取り組みが、トマムばかりか、北海道の新しい魅力を掘り起こした。星野はその理由を「トマムのスタッフが、顧客思考になったからこそ、実現できた」と強調する。
星野リゾートの旅館・ホテルでは毎月、各部門の現状や課題を議論する「戦況報告会」を開き、丸一日かけて話し合う。トマムの報告会には、星野も毎回、姿を見せた。
お客様からサービスに関する相談を受けると、トマムのスタッフはそれまで「会社として都合の悪いことは基本的にお断りする」ことにしていた。しかし、星野は「お客様の満足を考えて動こう」「どうしたらお客様の満足度を上げられるかという視点から考えよう」と強調した。
コンセプトを明確に定めたうえで、それに合わせた詳細なサービスメニューを組み立て、顧客満足度を高める。サービスの評価を高めることでリピーターを増やし、稼働率を上げる。同時に、業務の進め方を見直し、ムダを取り除く。こうして収益性を高め、早期の黒字化を実現する。
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